「水無月の雨」あとがき


2015年から連載開始した「水無月の雨」、4年越しでやっと完結&公開と相成りました。
巳之吉が刺されて意識を失ったところで止まったまま妊娠・出産を挟んで約3年の月日が経ち……(;´∀`)
気付けば「Beautiful Days」の2年を超えてしまいましたが、待って居て下さった、そして読んで下さった皆様に心から御礼申し上げます。
 
産後、今までのような書いて出しは無理だと思ったので完結させて一挙公開という形になりましたが、それに際し既存公開分にも大分改変を加えました。
一番大きいのは多分、巳之と六のBL色をほぼなくしたことです。
中断したところまではそうした展開に持って行くつもりで書いていたのですが、その後書き進めていくうちに巳之はあくまで陽性な存在であって性的に不可侵というか「イケメンでモテるけどとにかく仲間と酒飲んでる方が好い」っていう男子高校生的キャラが固まってきてしまって、どうにも色っぽい雰囲気から遠ざかってしまいましたw
かねがね巳之吉はBL的に美味しいキャラクターだと思ってはいるのですが、過去に一度藤野とくっつけようと思った時は流れでそうはならず、そしてやっぱり今回もそうはなりませんでした(笑)
 
そういう流れにしようと幾度かトライしてはみたのですが、作中で巳之吉が感じたように「身体は一丁前の男だけど精神的に幼い」という六と陽キャの巳之吉をここでくっつけるのは結局吊り橋効果的なものでしかないような気がしてしまって、まあ要は気(筆)が進まなかったのです。
その時点でもう「これは違うんだな」と思ったので、すっぱりやめました。
なのでまたBL成分低めな話になってしまいましたが、カップリングするという目的ありきな話(流れでそうなることはアリなんですが)はやはり書きたくない&書けないし、「白櫻館帝都夜話 巻之一」の後書きにも記したんですけどこうした長いシリーズの中ではどうも複数CPを作ったところで面倒見切れないので(苦笑)その分といってはなんですが、やはり私は進之丞と織部を描いていきたいです。その横に万京があるくらいが私としては丁度良いかなと。
 
また六については、櫻井が清太郎に「誰かを愛し愛され幸せを感じて欲しい」と言ったように、清太郎と対の存在である六にもまたそうであって欲しいと、私が思ってしまったのです。
そして虎六となった彼がいつか誰かを心から愛せるようになったときに、あらためて自分の過去とそこに存在した人たちに感謝出来るように、そんな人生をこれから寅屋で歩んでいって欲しいなと思います。
 
そして、清太郎。
私は名を与えたキャラクターはどうも最後に「いいひと」にしちゃいがち(悪党として出した者は別として)なのですが、清太郎はかつての喬太郎のように改心し救われた訳ではなく、自分の罪と罰に打ちひしがれながら六とも決別という形で大坂を去りました。
彼がああいう男になったのは親の所為もあるかもしれないし、周囲にちゃんと叱ったり諫めたりしてくれる大人や友人がいなかったり、櫻井の言うように逃げ続けた結果であったかもしれません。
でもそれはそのまま六にも当てはまることで、そう言う意味で二人は「対」でありました。
櫻井の裁きに導かれはしたものの、今回登場人物の中でこの先もっともしんどい道を往くであろう清太郎はそれなりの報いを受けたと言えるのではと思います。
 
 
さてこれでシリーズ6作目となりますが、西龍寺の道仙和尚は「闇に紅射す」から出ている人物にも関わらず、回想以外で登場したのは今作が初めてです。
以前、道仙和尚は進之丞の人生において重要なキーマンであるにも関わらず、これまでまったく登場していないのは不自然だというご指摘を頂いたことがありました。
単にそれまでの物語的に和尚が出る必然性がなかったというだけのことなんですが、まあそれもそうだなと思ったので「絆す炎」のあとにこの話の大まかな筋を立てたものの、その時に描きたいものを描きたいように描くという姿勢を貫いたらそこから2作挟むことになりました。
でも前作「Beautiful Days」の最後で和尚と佐吉たちが繋がる流れが出来たので、タイミング的には今だったな、と思います。
 
また道仙和尚は進之丞の生き方というか在り方に影響を与えた人なので、その言葉は大切に書きたいと思いました。
結果、その言葉には全て裏付けが出来て、過去や現在の事象にもちゃんとリンクしたと思います。
途中ほぼ2年まるっと空いたにも関わらず、なんとか自分自身が納得のいく形と流れで完結させられてほっとしているというのが正直なところです。
 
 
進之丞と織部が「闇紅」で再会し、「宵待」で一緒に暮らしはじめ、「藤花」〜「絆す」にかけて「武士である織部」と「町火消である進之丞」の違いを描き、「風花」で新たな信頼関係を築いた二人を描き、そして「Beautiful Days」で祝言を挙げる……というところまで来たので、前作を中締め的な話と位置づけました。
さてじゃあ次の話でどうなるか、というところだったのですが、和尚が出て来たらなんとイチからどころか禎織と鼎の代まで時を遡るという展開に。
和尚が鼎の言葉を伝えるというのは初期プロットには無かったものなので、これもまた「流れ」でそうなったと思っています。
 
禎織と鼎の選択は進之丞と織部を苦しめたかもしれませんが、結果的に彼らは今寄り添って共に居ます。
それは彼らがそうなりたいと望んで行動したから叶ったもので、だからこそ今、ちょうど二人が離ればなれになった頃の父親たちと近い年になった彼らが、父二人の思いや選択に縛られることはなく「ただ受け止める」ことが出来、そしてこれからは自分たちの意志で『今』をこの先へ繋いでいく……そんな二人の有り様を、道仙和尚の目線で描きました。
江波や櫻井とはまた違う視点と立場から見つめる道仙和尚のその目線は、前述したように「今こそ出すべき必然性」があったもののような気がします。
 
一方、過去を受け入れたからこそ今を生きていられている二人に対し、自分自身で己を過去に縛り付け、囚われたままでいる六と清太郎。
そこに進之丞と織部の周囲の人たち──今回は主に巳之吉と櫻井ですが、二人に少なからず影響を与えた人物たちを関わらせつつ『今がある有り難さ』というものをそれぞれに対し描いたつもりです。
また、巳之吉は死の淵から生還し、和尚はもう思い残すことは無いと言ってこの世を去り、清太郎は傷と罪を負いながら生きていくという罰を課せられ、六は生きていくことの難しさに気付きながら自分の意志で自分の為に生きていくことを選ぶ……そうした「生と死は人の数だけある」という和尚の言葉を、物語の中でそれなりに表現出来たかなと思います。
 
個人的には、今回もやはり櫻井が書いていて楽しかったです。
御白州は事件の決着が付くところなので、それが物語のオチというか「まとめ」的な場面になりやすく、作中でも織部がそのまとめ役を櫻井に丸投げするような形になっていますが、単に幕引きするだけではなく梅屋一家の再出発に繋げられて良かったなと思っています。
主人公のすぐ脇に居るキャラクターは作者目線になりやすいので要注意だと思ってるのですが、櫻井と京治、あと江波さんはキャラと立場がしっかりしているのと、自分自身が年が近いのもあって迷いなく書けていいですw
 
 
そして、これは先の話ですが……
和尚を見送ったとき、特に織部は『今』が『有り難い』ものであることを痛感しました。
留めることなど出来ず流れて行く時の中で得るものもあれば失うものもあって、それは自分たちの『今』も例外ではない──という流れで、次のシリーズに続きます。
次のシリーズ7は昨年夏コミの時点でもう大体の筋は立ててあるのですが、秋庭合わせの「白櫻館 巻之二」も書き始めないといけないし、今までのような書いて出しではなくやはり完結&公開としたいので、恐らくは来年のことになるんじゃないかと(;´∀`)
 
……とは思いつつも、書いたら書いたですぐに読んで頂きたくて結局書いて出しにするかもしれませんけどw
いずれにしても「紅寅シリーズ」まだ続きますので、引き続きお付き合い願いたいと思う次第です。
 
 
ちなみに和尚様はこれで「あの世から織紅応援し隊(右近にしか見えない)」に目出度く入隊されましたw
この先も鼎さんと一緒に二人を見守っていてくれることと思います。
 
ここまで読んで下さった皆様に重ねて御礼申し上げると共に、それぞれ頑張ったキャラクターたちに感謝と労いを申します。
どうもありがとうございました!
そしてこれからも「紅寅シリーズ」を、何卒よろしく御願い申し上げ奉りますm(__)m
 
 
2019年7月1日 紅屋 町田相模